スターへの道
第10章:強い女であるとともに、よき母親として

クリストファーがピアノのレッスンや中国標準語、英語の勉強に日々苦しむ一方で、姉のクリスティンはパリでの都会暮らし に少しずつ馴染んでいった。彼女は香港から持ってきた、たくさんの探偵小説に熱中した。名探偵エルキュール・ポワロやシャーロック・ホームズ、助手のワ トソンなど探偵小説の登場人物たちは、言葉や国籍、文化の壁を越えて彼女を楽しませたようだ。一方、息子のクリストファーは、学校の近くの玩具店で買った おもちゃのピストルがお気に入りだった。気のいい玩具店の店主は、お母さんのクレジットカードがあれば、好きなだけおもちゃを買っていいよと息子に言っ た。もちろん、ほとんどの親はそんなことを許すはずがないが、わたしは息子に自由にカードを使わせるだけでなく「ほかには何かほしいものはないの?」と聞 いたりすることも多かった。そこには、わたしなりの教育哲学があった。跡取り息子であるクリストファーには、子どものころからしっかりとした金銭感覚を 養ってもらいたかった。お金を遣い過ぎるとどうなる のかということを肌身で知るとともに、自分がすべきこと、してはいけないことを区別できる人間になっ てほしかったのである。

   
1985年、中国国務院の招きで、北京の人民大会堂で開かれた建国記念日の祝賀式典に出席した  
   
 
シンガポールで開催された航空ショーにてヘリコプターに試乗   パリで開催された航空ショーにて

     
 
お祭りのお面をかぶるクリスティン。彼女はミステリーに感化された   推理小説作家、アガサ・クリスティー

   

 

子ども向け戦隊ドラマ『パワーレンジャーズ』のマスクをかぶるクリストファー


息子は、普通の男の子たちと同じようにおもちゃのピストルで遊ぶことに熱中したが、やがて虚しさを感じるようになった。子どもじみたことをしなくても、もっと満足感や達成感が得られるものを求めるようになったのだ

クリストファーはスウォッチのコレクションに熱中した
   
夫のデービッドは、クリストファーの誕生日に1000本のゴルフティーを贈った

 

クリストファーはかなり幼少のころから、生きることの意味や、自分にとってのやりがいとは何なのかということを考えるようになった。

生きる意味を探し続ける


1990年、わたしはシャンティの近郊で1頭の競走馬を買った。このとき、このことについて、誰かが息子に「君の人生を一変させるような出来事だ」と語っ たとしても、息子はその人物に対して、眼鏡越しに疑いのまなざしを投げ掛けたに違いない。このときは、わたしのちょっとした買い物が息子の未来に大きな影 響を及ぼすことなど、誰も思いも寄らなかったのだ。

見晴らしのよい風景と馬たち


わたしはビジネスで家を空けることが多かったので、片時も離れずに息子の面倒を見ることはできなかった。しかし、息子はそれをいいことに、級友たちを家 に招いては、コカコーラやポテトチップ、風船ガムなどを振るまったり、一緒にテレビゲームで遊んだりした。お手伝いさんたちは、そんな様子がわたしに見つ かったら息子は怒られるに違いないと思っていたようだが、わたしはむしろ、クリストファーの新しい友達を温かく迎え入れ、料理を振る舞ったりしたものだ。 

クリストファーと母親の崔黄紫霊
   
娘とティータイムを楽しむ崔黄紫霊
 
母親になったばかりのころ
   
金髪の子どもたちに囲まれたクリスティン


職場においては強い女であったわたしも、家庭に戻れば料理を愛する1人の主婦となった。新鮮な食材を丹精込めて料理することの楽しさといったら。わたしが つくった料理で家族全員が幸せになることも、このうえない喜びだった。わたしにとっては、家族のいるわが家こそが最高の楽園だった。もっとも、お手伝いさ んたちにすれば、食べ盛りの息子とその大勢の友達に食べさせる中国の伝統料理を次から次へと準備するのは、とても大変なことだった。

中華焼きそば
   
北京ダック


息子が友達を呼んで大騒ぎしているときも、娘のクリスティンは自分の部屋に1人でこもって、大人しくピアノを弾いたり、大好きな探偵小説を読んでいたりし た。クリストファーの友人たちは、娘のことを神秘的で不思議な子だと思ったようだ。彼女の部屋からは「アヴェ・マリア」やショパンの「ノクターン」などの 調べが流れてくるが、実際にピアノを弾いている姿は見たことがない。息子の友人たちが初めてクリスティンの姿を見たときには、その妖精のようなかわいらし さに、思わず大歓声が上がったものだ。






 
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