スターへの道
第3章:ヒスイの馬:一族の家宝

やがてわたしたちは、息子のクリストファーと娘のクリスティンを、彼らの住み慣れた故郷、香港から異国の地パリへと送り 出すことになった。フランス行きにあたり、わたしたちの父は中国の伝統にのっとって、たった1人の男の孫であるクリストファーにヒスイのペンダントを渡 した。そのペンダントは、中国では神聖な生き物である「馬」をかたどったものだった。住み慣れた故郷を離れる人々にヒスイのペンダントを贈るのは、中国で は大切な習わしである。贈られる人にとって、ペンダントは苦しいときに故郷を思い出させて奮起を促すものであり、お守りでもある。お金に困ったときは、そ れを売って生計の足しにすることもできる(もっともヒスイのペンダントを売ることは、一族の恥とみなされるのだが)。

虎をかたどったヒスイのペンダント
 
馬をかたどったヒスイのペンダント



龍をかたどったヒスイのペンダント
 
うさぎをかたどったヒスイのペンダント


クリストファーに贈られた馬のペンダントは、崔一族の代々の家宝であった。鮮やかな緑色で透き通ったペンダントは、その奥に持ち主の希望や夢を抱きながら 輝いているように見えた。パリに移住して間もないころ、クリストファーたちはこのペンダントにどんなに慰められたことだろうか。フランス語もろくに話せ ず、外国の文化に溶け込むのに苦労していた彼らにとって、ペンダントは数少ない安らぎだった、その後、わたしたちはクリストファーのために、香港からおも ちゃやテニスラケット、ピアノなどを送ったが、それらの品々はかえって、彼に里心を抱かせることになってしまった。唯一、家宝である馬をかたどったヒスイ のペンダントだけが、彼のホームシックを癒してくれたのである。

家宝である馬をかたどったヒスイのペンダント


もちろんクリストファーも、同じ年ごろの男の子たちと同じ遊びに夢中になることはあったが、どんなときでも「霊馬」の存在は、彼の心を捉えて離すことはな かった。クリストファーは幾度となく、夢の中で「霊馬」とともに走り、太陽の光が降り注ぐ草地の上や木陰でともにたたずんだ。クリストファーの心の中は、 つねに「霊馬」への憧れで満たされていたのだ。 

シー ザ スターズの子どもと草地にたたずむ星の王子さま
 

 








 
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