スターへの道
第6章:息子の乳母

息子の乳母と家庭教師を兼ねていた女性は、カナダのケベック州生まれの若い中国人女性だった。フランス語文化圏のケベッ ク州生まれだけあって、パリジャンと同じ発音ではないにしても、彼女は流暢なフランス語を話した。性格が穏やかで、レンズの厚い眼鏡を掛けた彼女は、 熱心にクリストファーの面倒を見た。息子に英語の読み書きや会話を教えるのも彼女の仕事だった。フランス語に囲まれた環境の中で、中国人の子どもに英語を 教えるのは容易ではなかったはずだ。彼女は息子に『ガーフィールド』の漫画を読んであげたり、一緒にテレビのアニメ番組を見たりして楽しんだりした。エン タテインメント好きの彼女がお気に入りの映画俳優は、ピアース・ブロスナンとメル・ギブソンだった。この2人の俳優が恋人と別れたというスキャンダルが報 道されると、「わたしの出番が来た!」と無邪気に喜ぶのがかわいらしかった。わたしたち一家がフランス北部のドーヴィルに旅行したときのこと。わたしの 甥で20代そこそこのセバスチャンが、街中でジェームズ・ボンドにそっくりの男を見掛けた。その男はフェラーリの中から颯爽と現れると、両腕に美女を抱い たまたカジノに入った。その姿に見惚れたセバスチャンは「あっ、あの人を見てよ。僕も彼みたいに女の子たちと腕を組んで歩いてみたい」と興奮気味に言っ た。すると、それ聞いた乳母はすぐさま「わたしじゃだめ?」と言った。このエピソードは、いまでもわが家の語り草となっている。彼女が10年以上にわたって熱心に面倒を見てくれたおかげで、息子は漫画が大好きな子どもになった。やさしい乳母の存在は、いまでも息子の心に強く残っているようだ。

乳母とクリストファー
 
漫画『ガーフィールド』
         
甥のセバスチャン
 
ピアース・ブロスナン
 
メル・ギブソン

 




 
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